
🔧 エンジンストール(エンスト)
今回お預かりしたのは、1999年式のダッジ ラムバン。
ご相談内容は、走行中にエンジンが突然止まってしまう(エンスト)でした。

実はこの「ラムバンのエンスト」、私の経験上では エンジンコンピューター(PCM/ECM)の故障が原因であることがとても多いんです。
ですが、今回は少し厄介なケースでした…。
オーナー様からの情報では
・走り始めて 30分くらい経つとエンストする
・止まったあと、すぐに再始動できることもある
・時間をおいて再始動する時もあり
・再始動後は再び止まるまでの時間が短くなる

先ずはクライスラー純正の診断機「DRBⅢ」でエラーメモリー(トラブルコード)を確認しましたが、エンストの直接的な原因になりそうなコードは記録されていませんでした。
🚗 症状の再現テスト(試運転)
実際に症状が起きるかどうかを確認するために、30分以上の試運転を行いました。
が、全くエンストしません…😓
何度か走行テストを行いましたが、残念ながら エンストの症状は再現できませんでした。
そこでお客様には状況をご説明したうえで、次の対応としてアイドリング状態でしばらく放置し、症状が出るか様子を見る方法をとることにしました。

アイドリング状態で約1時間放置したところ、ついに 突然エンストが発生しました。
すぐに再始動できるかを確認したところ、再始動できない状態でした。
⚠️ 再始動できないのはチャンス?
少し不思議に思われるかもしれませんが、「再始動できない=どこかに不具合がある証拠」です。
この今まさに壊れている状態が、原因を正確に突き止めるための貴重なタイミングになります。
すぐに再始動できてしまうと、不具合の兆候が消えてしまい、故障箇所の特定が非常に難しくなってしまいます。
今回は再始動できなかったことで、ようやく本格的な故障探求を進められる状況となりました。
すぐにエンジンカバーを外して、怪しい箇所の電圧や信号などの測定作業に入りました。
ですが…その作業中に、エンジンがまた再始動できる状態に戻ってしまいました。😰
このようなintermittent(断続的)な不具合では、症状が出ている「まさにその時」に診断しなければ、
根本原因を突き止めるのが非常に困難になります。

何度もこのようなテスト&チェックを粘り強く繰り返す中でどうやらクランクポジションセンサーに不具合があるのでは?という結論にたどり着きました。
実を言うと、お車をお預かりした当初からクランクポジションセンサーには違和感がありました。
というのも、明らかに新品と思われるセンサーが取り付けられていたのです。
「なんで新品がついてるんだろう?」という疑問はあったものの、
すでに交換済み=問題なしと判断して、初期の原因候補から外してしまっていました😓

🔍 クランクポジションセンサーの確認には「オシロスコープ」が必要
クランクポジションセンサーの不具合を正確に見極めるには、オシロスコープによる信号波形の確認が不可欠です。
ですが、今回のように「いつ症状が出るか分からない」ケースでは、症状が出る“その瞬間”を逃さず捉える必要があります。
そこで、あらかじめオシロスコープをセットし、センサーの信号を常時モニタリングしながら、
エンストが起きるタイミングをひたすら待つことになります。
一見地味な作業ですが、ここが最も重要で神経を使うポイントだったりします。
原因を確実に突き止めるために、時間をかけてじっくり見守る必要があるのです。
🔧 センサー波形の異常がハッキリと!
オシロスコープを接続して待っていたところ、ついにエンジンが始動しないタイミングがやってきました❗
このときの波形を確認すると──
エンジンが掛からない時には、クランクセンサーの波形がまったく出ていない状態。
その後、わずかに波形がピッと出た直後にエンジンが始動。
そして、始動後は正常な連続波形が表示されるようになりました。

🧠 クランクセンサーだけじゃなかった…!?
実は今回のトラブル、クランクポジションセンサーの不良以外にも、もう一つ原因がありました。
その部分についてはここでは割愛しますが、「まさかこんなところが?」と驚くような箇所で、
自分の中でも**“整備の引き出し”がまたひとつ増えた**案件でした🤔

真の原因…ラスボス登場!
今回のラムバン、実は一筋縄ではいきませんでした。
クランクポジションセンサーの不具合を突き止めて、「これでOK!」と思っていた矢先
最終チェックをしていた所に再度のエンスト😰
スピードメーターに『NO BUS』の表示が!
これは、経験上 PCM(エンジンコンピューター)の異常が出ている時に見られる症状です。
⚡実は最初から疑っていたPCM
実は、作業を始めた初期段階でも「PCM怪しいな」とは思っていました。
ただ、今回のように複数の不具合が重なってエンストしていた場合、原因を一つひとつ潰していく作業は本当に難解です。
順を追ってセンサーの異常を解決し、ようやく最後の最後に姿を現したラスボス──それがPCMでした。

🔧 三つのトラブルが引き起こしたエンスト
すでに製造から26年が経過している1999年式のラムバン。
当然ながら、PCMはメーカーでもすでに生産終了。
リビルト品すら入手困難な状況でした。
「これは厳しいかも…」と思いながらも探していたところ、なんと運よく社外リビルト品を発見!✨
すぐに手配して交換作業に入りました。
今回のように「エンストの原因が複数あった」ケースは稀で、整備士としてもとても勉強になる案件でした。
ただ一つ言えるのは、古い車ほど“過去の修理歴”や“部品の品質”が複雑に絡んでくるということです。
こうした症状は一つ一つ丁寧に追いかけていくしかありませんが、解決できた時の達成感はやっぱり格別ですね😊
お預かりから数カ月という長丁場になってしまい、その間に消耗品も含め、交換部品はそこそこ発生してしまいました。
それでも、エンスト症状の原因を一つひとつ探り、再現性のない不具合に粘り強く向き合い続けた結果
ようやく無事に修理完了までたどり着くことができました!
お車を大切にされているオーナー様にとっても、私にとっても「やっと辿り着けた」という安堵感のある整備でした。
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